コラム 「RPAの気になる話」

S-1から読むUiPathとRPAとシステムアーキテクチャ

2021.05.17

RPAとシステムアーキテクチャの新たな一面

WinActor一問一答無料で使えるAI-OCRMicrosoft Power AutomateUiPathワークフローの作り方 とテクニカルなコラムが続いたので箸休め。

 UiPath社がIPOのために作成しているS-1フォームを読んでみたら、RPAとシステムアーキテクチャの新たな一面を見ることができたので1つの考え方としてご紹介します。ちなみにS-1フォームは日本でいうところの目論見書。IPOのために米証券取引委員会(SEC)に提出され開示される書類です。ご存知の方も多いと思いますがUiPath社は20214月、ニューヨーク証券取引所にIPOしています。

 S-1フォームには公募価格、その企業のビジネス、マネジメントチームのプロフィール、業績説明、財務諸表など、投資家が投資判断するために必要な情報が書かれていますが、特徴的なのはManagement Letterが付いているところです。これは簡単に言うとIPOしようとしている企業の経営者から将来の株主に向けたお手紙で、ここまで成長してきた軌跡、顧客や従業員への感謝の言葉、これからのビジョンが語られています。やや情緒的なところもあり、経営者の素の面が見えるとも言えます。

 UiPath社のS-1フォームでは「LETTER FROM DANIEL DINES, CHIEF EXECUTIVE OFFICER, CO-FOUNDER, AND CHAIRMAN」となっており、全文はこちらになります。

S-1 FORM – UiPath, Inc.

LETTERの中で、システムアーキテクチャでのRPAの位置づけについて書かれている部分があるので抜粋して引用します。

Eventually, automation will become an established layer in the enterprise stack, sitting on top of the application layer. Most of the routine use of underlying apps will be delegated to the automation platform enabling our customers to achieve the fully automated enterprise.

(参考訳)最終的に、自動化は企業システムスタックの1つのレイヤになり、アプリケーションレイヤの上に位置付けられるだろう。アプリケーションのルーチンな利用の多くは自動化プラットフォームによって代理され、我々のカスタマは充分に自動化された企業を実現するだろう。

システムアーキテクチャはレイヤ(スタック)で表現されます。ネットワークやサーバがあって、その上にミドルウェアがあって ・・ アプリケーションがあって、一番上にオペレーションがあるあの図です。システムに関わる方は、必ず目にしている図だと思います。システムによってレイヤの数や書き方も違いますし、最近ではレイヤの一番下がクラウドになったりと、時代とともに変化したりもします。

引用部分では「自動化レイヤ」を一つの確立されたレイヤと言っている点がポイントです。自動化はアプリケーションでもなく、一時的なツールというわけでもなく、システムのレイヤの1つであるということです。また、人を置き換えるというより、人の代理(delegate)と捉えているのもポイントでしょう。

自動化レイヤを含むシステムアーキテクチャは図で書くとこのようになると思います。自動化レイヤはアプリケーションとユーザの間に位置します。

この図で考えるなら、これからは「運用設計」の中でユーザの代理であるRPA(UiPathで言うとワークフロー)をどう組み込んでいけばいいか検討することになります。また、業務改善の一環でユーザから自動化が提案されたり、場合によってはユーザ自身がワークフローを実装したりできる環境を整えるということも必要になりそうです。APIやローコード開発も自動化レイヤと密接に関わってきます。

UiPath社が企業システム内でプレゼンスを得たいから、自身のレイヤを書き加えようとしているだけじゃないか」という意地悪な見方もないわけではないですが、RPAでシステムアーキテクチャが変わるという見方は示唆的です。

LETTERの冒頭では「手作業の時代は終わる(close the circle of history – a circle of manual forced workd)」とも書かれています。RPAを便利ツールとしてだけ見るのでなく、システムアーキテクチャを変えるもの、手作業とシステムの境界を変えるトリガーという視点でも見るべきなのかもしれません。


注意:

  • コラムで株式関係書類を取り上げていますが、投資を推奨・勧誘するものではありません
  • 引用部分以外はCACの見解であって、UiPath社の見解を示すものではありません 

このコラムの執筆者

株式会社シーエーシー
産業ビジネスユニット 産業ソリューション第一部
新谷 敏之

RPAソリューションのマーケティングを担当しています。Webサイト、ニュースレター、セミナーを通してRPAのイマ・ミライ、そしてCACのことをお伝えしようと思います。

本記事のカテゴリ :RPA技術コラム

ジャンル:RPAその他

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