RPAの「草の根導入」(自社でRPA開発)を始める前に知っておきたいこと
目次
業務改善・効率化の方法としてRPAが定着して久しいですが、今回、RPA導入方法についてお話します。世間一般的にRPAの導入には大きく2つの方法があるかと思います。
- 現場の方が自分たちでRPA製品を使って業務を自動化開発する
(ここでは「草の根導入」と呼びます) - 専任チームが自動化開発する
(いわゆるCoE(Center of Excellence)によるRPA導入)
ここでは 1. の草の根的にRPAを導入・開発する場合に、どのようなことに注意すべきか、について取り上げたいと思います。
> RPA「草の根導入」「CoE導入」に関する過去セミナー(ウェビナー)動画はこちら
「草の根導入」とは?
まず、ここでいう「草の根導入」を以下とさせてください。
現場で日々業務に従事している方々が、RPAの開発方法を学び、身の回りの業務を自らRPAで自動化する手法
つまり、自社内でRPA開発(ワークフロー、シナリオ設計)と運用体制をつくる手法
RPA開発方法を教える社内研修の開催や進捗の管理を行うチームは別に存在する場合があると思いますが、「草の根導入」の考え方として、原則、現場の方が自分たちの手でRPA開発を行います。
メリットはおもに以下があります。
- 社内の人が開発するので費用が発生しない(厳密にいうとキャッシュアウトが発生しない)
- 「要件定義」する人と「開発する人」が同じ人なのでRPA開発に慣れた人が作るなら開発リードタイムが短縮できる
- 「業務を実施する人(業務を熟知している)」と「開発した人(ワークフローの仕様を把握している)」が同じ人になるのでトラブル発生時の対応時間を短縮できる
「草の根導入」で注意すべきポイント
ただし、自社内でRPA開発する上でいくつか注意点があります。
RPA開発に必要な時間が確保できるか?
RPA開発は「一般的なプログラミングと比較すれば」簡単と言えます。ただ、1業務を自動化するまでには、ある程度まとまった時間が必要です。
現場の方は誰しも本業となる業務があるかと思います。「本業と掛け持ちで開発できる時間が確保できるか?」は確認が必要です。別の言い方をすると「RPA開発にかける時間を考慮した業務量にできるか?」となり、そのためには少なくともチームや部、出来れば会社としてコンセンサスを取っておく必要があります。ロボットが必要になっている理由の一つに、「業務量は変わっていないが、労働力は増えていない」背景があります。開発にかけられる時間が十分ではない場合、開発生産性が低くなり業務改善が計画通りに進まない可能性が出てきます。
RPA開発で実施しなければならないプロセスは以下があります。
RPA開発スキルはあるか?
RPAはおおよそほとんどの製品で開発は簡単と言われることが多いかと思います。ただし、製品によるものの、やはり人により向き不向きはあります。全員ができるわけではないと言うことを前提としておいたほうが良いでしょう。
開発時間に加え、人材(RPA開発者として)のリソースが十分にあるかの確認も必要です。
最低限のITリテラシーはあるか?
RPAによる自動化開発は、RPAによる自動化開発だけ知っておけば良いというわけではありません。設計時には必ず「ロボットがこのシステムを効率的に操作するにはどう設計するのが最適か」考える必要があるためです。人手の操作をそのまま自動化するとは限りません。何らかの開発経験が必要とまではいきませんが、RPAが操作するアプリケーションやシステムに対する最適な自動操作を設計するために、必要最低限のITリテラシーは必要になると考えています。たとえば、「WebでShare pointにアクセスするのではなく、今回はフォルダでアクセスして操作したほうが開発しやすそう」や「ロボットが下書きしたメールを、担当者のPC上で送信前チェックするには担当者のOutlookからロボットのメールボックスを参照できるようにしよう」などと言ったアイデアに気付けるか、です。なんらかITに関わった人にとっては当たり前でも、全員がそうとは限らない点はRPA導入前に考慮が必要です。
横展開の仕組みが必要
草の根的なRPAを導入・開発によって業務を改善した場合、なかなかノウハウが社内に横展開されない可能性があります。社内の開発生産性を上げるために、他の業務でも使える部品や開発時の注意点などを、他の部署に横展開できる仕組みが必要になります。
属人化していく落とし穴
開発した人が異動や退職する場合もあります。ロボットは環境変化の影響を受けやすいため、システム側が変更された場合、業務とともに引き継いだロボットの仕様を把握し、自力でメンテナンスしていく必要があります。そのため、引継ぎ項目の中に「まずはRPAの開発方法を学ぶ」が追加されます。もし開発スキルが無く手に負えなかった場合、せっかく作ったロボットが放置され無駄になってしまいます。
このように、「草の根導入」は一見、ライトなRPAにマッチしているように思われますが、注意しなければ上記のような課題が発生する可能性があります。
もう一つの選択肢
ではどうするか?ですが、もう一つの選択肢としてCoE推進をお勧めします。
CoEであれば、「草の根推進」の課題をすべて解決して、「全社の改善」を「最大効果」を出しながら進めることができます。
> RPA「草の根導入」「CoE導入」に関する過去セミナー(ウェビナー)動画はこちら
次回はこのCoE推進について取り上げたいと思います。
このコラムの執筆者
株式会社シーエーシー
産業ソリューション第二部 サービスプロデューサー
平山 智隆
「RPAでお客様がこれまで体験したことのない劇的な改善」をもたらすことを目標に、RPA導入サービスの企画、運営、推進を担当しています。これまで多岐にわたる業種、部署の業務自動化プロジェクトを、プロマネ、コンサルタントとして推進してきました。その中の成功・失敗経験から、RPAによる業務改善が成功するヒントをお伝えできればと思います。
本記事のカテゴリ :RPA技術コラム
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