RPA導入・拡大の課題と解決 ―知っておきたい3つのTIPS
※本コラムは過去公開コンテンツの「RPA導入・拡大につまずかない3つのTIPS」記事をリライトしたものです。
はじめに
RPAの導入や拡大において、「知っていれば解決できた課題」でプロジェクトが遅れたりストップしたりしてしまうのは、非常にもったいないと思います。
RPAはスモールスタートできる点がメリットであり、また、自動化による作業時間削減で大きな費用対効果が期待されます。そこで、ここでは「追加のコストを掛けず(知恵と工夫で)、導入時の課題を解決する方法」を3つのTIPSと題してご紹介します。
RPAライフサイクル
CACは、RPAのライフサイクルを「計画」、「開発」、「運用」の3つのフェイズで考えています。各フェイズの内容は、
- 計画フェイズ・・・RPA化する対象業務を「発見」して「選定」する
- 開発フェイズ・・・選ばれた対象業務をワークフローで自動化する
- 運用フェイズ・・・開発したワークフローを改善しながら運用していく
となります。この3つのフェイズを繰り返し、繰り返し、成長させていくことがポイントです。RPA推進部門・RPA利用部門・開発担当それぞれで、フェイズ毎の役割は以下のようになります。
RPAの各フェイズでよくある課題と解決策
①計画フェイズの課題と解決策
計画フェイズは、RPA化する対象業務を「発見」して「選定」すること
RPAの前提の1つに、すべての対象業務がRPAで自動化できる(あるいは自動化すべき)とは限らないという点があります。それでも、「計画フェイズ」では、自動化に適した業務を「選定」するために、なるべく多くの候補となる業務を「発見」することが重要になります。
対象業務の候補が多くあれば(例えば100業務)、その中から導入目的や工数削減効果などを総合的に判断して、開発対象を厳選することが可能になります。下の図では、候補100業務のうち、自動化できそうなものが30、うち費用対効果が出そうなものが20に絞られ、その中の3業務で検証を行い、結果をみて残り17業務を順次自動化する、という初期導入から拡大の流れを説明しています。
お客様の中には、社内稟議を上げて、RPA化の予算を取る場合もあると思います。そのような時も、対象業務をある程度まとまって発見できていれば、「最初は数本の開発から始めるが、将来的に自動化できる業務はこれだけあるので、この位の費用対効果が見込める」といった、稟議を通すためのストーリーも描きやすくなります。
しかし、対象業務の発見には様々な障壁が…
自動化対象業務を発見するためのスタンダードな進め方は、
1. 利用部門に対して「RPAでできること」を説明する
2. 部門で該当しそうな業務をリストアップしてらう
3. RPA推進担当者がとりまとめて自動化対象業務を決定する
となります。ただ、RPA推進担当者、業務担当者ともに様々な理由から、思うように対象業務が発見できない場合があります。例えば以下の様なケースです。
【RPA推進担当者】
RPA推進担当者に負荷が集中…
人を増やすにもROIを示せないと予算が下りない…
【業務担当者】
何が自動化できるかわからない…
目の前の仕事で手一杯で自動化に時間が割けない…
ここで費用対効果を示せるだけの業務を十分発見、選定できないと、RPA導入に十分な予算がつかず、推進担当者が業務に集中できずスピード感が出ないということになりがちです。その結果として利用部門の熱が冷めてしまったり、そもそも開発がスタートする前にストップしてしまうケースさえありえます。
もしくは、最初は自動化対象業務が集まっても、拡大期になってだんだん候補が出てこなくなり、RPAの効果が得られない前に尻すぼみ、ということも起こり得ます。
そこで、この課題に対する1つの解決策として、CACのサービス「RPA業務選定サービス」でも採用しているUiPath社の「Automation Hub」をご紹介します。
「Automation Hub」の機能とメリット
Automation Hubは、UiPath社のSaaS型業務抽出ツールです、2020年5月にリリースされました。 Automation Hubには3つのメリットがあります。
- SaaSだからいつでも、どこでも、すぐに使える
サーバー等を自前で用意しなくてもすぐに使え、さらに無料トライアルもあります。RPA導入・拡大前で、まだRPAの効果が出るかわからないなど、お金をかけにくい段階でも安心して利用することができます。 - 自動化したい業務投稿で自動化適合度とROIを分析できる
業務担当者自身が、自動化されると嬉しい業務を10程度の質問に答えながら投稿すると、自動化適合度とROIが算出されます。これにより、RPA推進担当者の負荷なく業務の収集と分析が可能です。
加えて、Task Captureという、いわゆる手順書作成ツールが付属されているため、業務の手順書が無い場合でも業務担当者とRPA開発担当者のコミュニケーションをスムーズにしてくれます。 - 利用人数無制限で全社/グループ会社含め広く業務収集できる
この製品は、利用人数無制限で、1契約でグループ会社も含めて利用することができるので、ROIを示すのに十分なボリュームの業務を発見することができます。
②開発フェイズの課題と解決策
ロボットの開発は、リリース後を見据えて
RPAを新たな労働力(デジタル・レイバー)と捉えた場合、開発期間はロボットが業務を覚える研修期間であり、リリース後は現場に配属された状況と考えることができます。
そうだとすると、開発(研修)は、リリース後(配属後)の運用を見据えて行わなければなりません。(人でも同様ですよね)
運用を見据えた開発のポイント
では、どうすれば運用を見据えた開発を行えるのか、そのポイントはいくつもありますが、次の2点は特に重要です。
- 修正を考慮して、可読性や保守性が高いワークフローを開発する
RPAは使って初めて気付く点も多く、また作動環境が変わった場合は修正が必要になるため、保守が頻繁に発生します。そのため、リリース後でも保守がしやすいワークフローを作りましょう。 - エラーが発生した場合に、人に通知が行くようにきちんとエラーハンドリングを実装する
エラーが発生し処理が止まっていても誰も気づかない、という状況を避けるため、きちんとエラー通知ができる実装を行いましょう。
品質が一定にならない原因とその解決策
RPAは自由度が高く、動くものを作るだけなら簡単に出来てしまうため、RPAの開発者によって品質にムラが起きないように注意が必要です。たとえば、ボタンを押すときちんと動くが、どこでどのような処理をしているのか開発した人しかわからないとか、エラーハンドリングの実装をするかしないか開発者によって判断がまちまち、エラーハンドリングするとしても方法が開発者によって異なるといった、実装のムラはよく見られるケースです。
これでは品質が一定になりません。この課題に対する対策は以下となります。
1. RPA開発規約を策定し準拠する
2. RPAフレームワークを活用する
1の「RPA開発規約を策定し準拠する」は、開発時に守るべきルールをあらかじめ決め、開発者がルールに則って開発することで一定の品質を維持できるようにする方法です。2の「RPAフレームワークを活用する」については、次から詳しく説明します。
RPAフレームワークとは
フレームワークとは、開発における生産性と保守性を高めるために使う、いわゆる「開発テンプレート」のことです。
RPAフレームワークは、以下図の通り、4つのコンテナで構成されています。コンテナは決められた用途に応じた処理の入れ物と考えて下さい。
各コンテナの用途は、次の通りです。
1) 初期設定コンテナ
業務処理に必要なアプリケーションの起動や、必要なデータの取得
2) 処理データを一件ずつ取得コンテナ
1で取得したデータの中から、処理するためのデータを1件ずつ取得
3) メイン処理コンテナ
2で取得したデータを使って、業務(メインの処理)を実行
4) 終了処理コンテナ
ワークフローの終了処理と起動したアプリケーションの終了
ポイントは、3の「メイン処理コンテナ」に入れるメインとなる処理(たとえば「エクセルから○○システムへデータを入力する」など業務によって異なる処理)は開発者自身が書かなければいけませんが、それ以外の、データを取得する処理や終了処理、エラーハンドリングなどの基本実装はあらかじめ済んでおり、誰が開発しても一定の品質を担保することができるという点です。
また、用途別のコンテナに処理を設定していくため、開発時とは別の担当者が保守を行う場合であっても、どこに何が書いてあるか分かりやすく、保守性が高まります。
RPAはリリースしてからが本番!
RPAはどうしても開発にスポットが当たり、ロボットのリリースがゴールになりがちです。冒頭に述べたようにロボットはリリースされてから(配属されてから)が本番です。実際、RPAの失敗事例の大半は運用後に多く発生しています。
保守性と品質に問題があるロボットが大量に配属されてしまう前に、開発初期からRPAフレームワークを活用することをお勧めします。
RPA製品によっては、メーカーがフレームワークを提供している場合もありますが、CACの提供する開発規約とRPAフレームワークは、CACが実際に多くのプロジェクトで実践検証済みでおススメしています。
③運用フェイズの課題と解決策
ロボット実行中はパソコン画面のロックができない
RPAは、Windowsパソコンにインストールして業務を自動実行しますが、「ロボット実行中はパソコン画面のロックができない」という問題点があげられます。
ロボットによる自動操作の実行中は、画面を表示したままにしていないと、操作対象アプリケーションの画面を特定することができません。そのため、画面ロックやログオフ、スクリーンセーバーが起動するとRPAの実行が失敗してしまう場合があります。人が業務を行っている場合は、常に人が見ていれば問題にはなりませんが、無人のオフィスで、パソコンだけが、画面を表示したまま重要な業務(たとえば給与計算)を実行するのは、情報セキュリティポリシー上、問題です。
一つの対処方法として、「ロボットが操作するパソコンを作業担当者の脇に置き、人の監視下で実行する方法」もありますが、業務時間外に処理したいなど自動化ニーズを満たすことが難しくなります。
ロックしたまま画面を表示せずに業務を実行するには
対処方法として、RPA管理サーバーと連携することで、ロックあるいはログオフ状態のまま画面表示せず業務を実行することが可能になります。
1. RPA管理サーバーからロボットへ業務の自動実行を指示する
2. ロボットは自分自身へリモートデスクトップセッションを張る(ローカルループバック)
3. 2の擬似的なコンソールセッション内で、業務を自動実行する
こうすることでローカルコンソールはロックしたまま画面を表示せずに業務を実行することができます。RPAメーカー各社は、それぞれRPA管理サーバーを提供していますが、この操作ができる管理サーバーとそうでないものがある点には注意が必要です。
対象業務の選定や開発プロジェクトの陰に隠れて、RPAを実行するパソコンの置き場所の考慮が後回しになりがちです。RPAの全社拡大を見据えるなら、RPAを実行するパソコンの台数と置き場所、RPA用の実行アカウントの管理、それらを管理するためのRPA管理サーバーについても早めの検討が必要です。
まとめ
ここまで、RPAプロジェクトに生じがちな課題とその解決策を3つのTIPSとして紹介してきました。取り上げた課題は一部にすぎません。また、同じ課題でも解決策はお客様によって違ってきます。これは、同じRPA製品を使っていても同様です。つまり、他社の成功も失敗も、参考にはなるが他社のものということです。言い換えると、RPAを導入するということは、業務を作り直すということで、それはお客様固有の業務に他ならないのです。
CACはRPAソリューションを提供する立場として、お客様固有の業務や組織・カルチャーを正しく理解し、お客様の業務に適したRPAを提案し、お客様とともに考え、手を動かし、RPAプロジェクトを成功させたいと考えています。
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