コラム 「RPAの気になる話」

電子帳簿保存法改正で2022年からの経理業務はどう変わる?

2021.06.17

今回は、経理業務を取り巻く法改正とデジタル化の必要性についてです。202211日から、改正電子帳簿保存法が施行されます。この改正に関連して、いま知っておいていただきたい経理業務のデジタルトランスフォーメーションの必要性についてお話します。

> 2022年1月施行の改正電子帳簿保存法にも役立つセミナーはこちら

2022年、予定されている電子帳簿保存法の改正

来年、「電子帳簿保存法」の改正が予定されています。改正によって様々、改善・緩和されるものもありますが、引き続き要件を守るため実はいくつか課題もあります。改正内容の大綱は財務省のサイトに譲りますが、ここではデジタル化に影響の大きい点について、「どうする必要があるか」についてまとめます。

2022年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法

スキャナ保存に関して言えば、税務署長承認が不要になったこととタイムスタンプの付与期限が延びたことが一番の目玉となっています。これにより、経費精算の電子データ(画像など)による申請・確認の機会が増えると予想されます。これに伴い「申請された請求書や領収書の画像が法律で規定された要件を満たしているか?」確認が必要になる点がポイントです。

1. タイムスタンプ付与期間の制限の緩和

2021年現行】 画像の読み取りおよびタイムスタンプは「3営業日以内」

2022年改正後】 読み取り、タイムスタンプとも最長2ヵ月、おおむね7営業日以内

→ どちらにせよ請求書や領収書の日付が既定の日数以内であるか確認しなければならない

2. 読み取り情報の保存

改正法でも、読み取った帳票の明瞭性の要件は変わりません。したがって、以下のような条件に該当する画像はNGと考えられます。

  •  手ブレした画像
  •  斜めになった画像(画像が台形になっている)
  •  暗所で撮影された画像
  •  領収書が曲がっている画像
  •  請求書や領収書を持った指が写り込んでいる画像
  •  テカリで読み取りが難しい画像(光で飛んでいる画像)

→ 上記にあてはまる経費申請は経理部門で却下しなければならない

 

電子帳簿保存法の改正にAI-OCR活用で対応する(経理業務の効率化)

領収書や帳簿が電子化(ペーパーレス化)されると、プリントアウトや紙を社内便で送るといった手作業が不要となり便利です。一方、経費精算を考えてみると、スキャン・撮影した領収書画像と、ユーザがExcelや経費精算システムに入力したデータが合っているかどうか、二重申請になっていないかなどの確認作業は、経理部門の役割になり、業務負担はかえって増えるのではないかと考えられています。

これに対するソリューションとして、画像内の文字を自動で読み取り、データ出力できるAI-OCR機能と、読み取りデータと申請データを自動で突合・照合できるRPAを組み合わせ、業務の効率化を図る方法があります。

AI-OCRとRPAの組み合わせは企業の経理業務フローによってさまざまになりますが、典型的な例を挙げておきます。

この例では申請者が領収書をスキャナーもしくはスマートフォンのカメラで撮影し、その画像と申請内容を経費精算システムに登録します。システム側では申請内容と領収書の画像が一致しているかを突合する必要があり、この突合をRPAで行います。

RPAは経費精算システムから申請データを取得(①)。並行して領収書イメージデータを取得し、領収書イメージデータをAI-OCRに渡し、読み取りを行わせます(②)。AI-OCRのアウトプットである、読み取りOK/NGの判定、読み取られたデータを受け取り(③)、これを最初に取得した申請データと突合します。イメージデータの読み取りがOKで、かつ、AI-OCRの読み取り結果と申請データがマッチしてれば経費精算の続きへ(④)。読み取りがNG、もしくは、マッチしていなければメールなどで申請者に差し戻しを行います(④’)。

領収書にはコンビニのレシートから手書きの領収書まで、さまざまな種類があります。一部のAI-OCRは読み取る帳票のフォーマット定義、つまり帳票のどことどこを読んでほしいかを、あらかじめ定義しておく必要があります。領収書の場合、フォーマットの事前定義は現実的に不可能なので、フォーマット定義が必要ないAI-OCRを選ぶ必要があります。また、2021年3月31日から総額表示が義務化されていますが、領収書には内税価格、外税価格、消費税が混在しています。どの金額かを読み取るか正しく判断できることもAI-OCRを選ぶ際の要件になります。

 

電子帳簿保存法の改正はデジタル化のチャンス

電子帳簿保存法の改正により画像の取り扱いが増えます。一方で社内改善としてAI-OCRをご検討中のRPAユーザも多いと思いますが、「何から手を付けるるべきかわからない」、「目に見える範囲ではそれほど紙業務はない」などで着手に踏み切れない方も多いかもしれません。

来たるべき経理業務の変化に備え、今から経理業務のデジタルトランスフォーメーションの準備を進めることをお勧めします。

シーエーシーでは、「AI-OCR連携で始める紙業務デジタル化」をテーマに、経理部門のためのRPAセミナーを実施しています。お昼の30分で誰でも受講できますので、ぜひお気軽にご参加ください。

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SPECIAL THANKS

このコラムの記述、特に改正電子帳簿保存法に関する記述については FAST ACCOUNTING社様 の監修をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

このコラムの執筆者

株式会社シーエーシー 
産業ソリューション第二部 サービスプロデューサー
平山 智隆

「RPAでお客様がこれまで体験したことのない劇的な改善」をもたらすことを目標に、RPA導入サービスの企画、運営、推進を担当しています。これまで多岐にわたる業種、部署の業務自動化プロジェクトを、プロマネ、コンサルタントとして推進してきました。その中の成功・失敗経験から、RPAによる業務改善が成功するヒントをお伝えできればと思います。

本記事のカテゴリ :RPA技術コラム

ジャンル:AI-OCRRPA計画・導入

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